政府は、11月2日、「デフレ完全脱却のための総合経済対策~日本経済の新たなステージにむけて」と題し、2023年総合経済対策を閣議決定し、閣議決定文書を発表しました。
その第2の柱として、以下の3点を目玉として、それぞれの各種施策を推進していくこととしました。
1. 賃上げの環境整備(中堅中小企業を含めた持続的賃上げ・所得向上)
2. 人手不足対応(生産性向上を通じた賃上げ継続の支援)
3. 「年収の壁」への対応を含めた所得向上へ取組
賃上げの環境整備
賃上げ促進税制の強化
物価高に負けない賃上げを実現できるよう制度を強化
賃上げ促進税制における賃上げ増加額に対する税額控除を拡充
中小企業等の赤字法人においても、賃上げを促進するための繰越控除制度の創設
税額控除を受けられない赤字法人のために、黒字になったときに赤字の年の分を含めて税優遇を受けられるようにする
税制措置の期限の在り方等を検討
~2024年度税制改正で検討し、結論を出す
(参考)
現行、中小企業向け賃上げ税制の概要 2022年税制改革
経済産業省 HPから引用
「中小企業向け賃上げ促進税制ご利用ガイドブック-令和4年4月1日以降開始の事業年度用-」
最低賃金額の底上げ推進
- 今年度、全国加重平均 1,004 円となり、目標として いた 1,000 円を超えた
- 最低賃金を30円以上引き上げた中小企業の設備投資費用を補助する「業務改善助成金」は、引き上げ額によって30万〜600万円を助成する
- 公労使の三者の最低賃金審議会で毎年の最低賃金額について議論を 行い、 2030 年代半ばまでに全国加重平均が 1,500 円と なることを目指す。
労務費転嫁の価格交渉に指針
- 中小企業・小規模事業者が賃上げの原資を確保できるよう、原材料費・エネルギーコスト上昇分の全額転嫁を目指し、価格転嫁対策を推進する
- 内閣官房と公正取引委員会により、労務費の適切な転嫁のための「価格交渉に関する指針」を 2023 年内に策定する。指針には以下を盛り込む方針
- 発注者側は転嫁に関する取組方針を経営トップの関与の下に決定・運用する
- 受注者側との定期的な協議の場を設ける
- 受注者側が準備する根拠資料は、その負担とならないよう、賃上げに関する公表資料を用いる
人手不足対応
医療・介護・障害福祉分野の賃上げに財政措置
医療・介護・障害福祉分野においては、2024 年度の医療・介護・障害福祉サービス等報酬の同時改定での対応を見据えつつ、喫緊の課題に対応するため、人材確保に向けて賃上げに必要な財政措置を早急に講ずる。
(必要な財政措置:2023年度補正予算案)
24年2月から介護職員1人あたり月6000円の賃上げを実施する。
介護事業者に賃上げ原資として計581億円を配る。
生産性向上を通じた賃上げ継続の支援
- 人手不足に悩む中小企業・小規模事業者のため、省人化・省力化投資に関 して、カタログから選ぶような汎用製品の導入への簡易で即効性がある支援措置を新たに実施する
- 事業の実情に合わせた生産プロセスの効率 化・高度化を支援す
- 中堅・中 小企業が工場等の拠点を新設する場合や大規模な設備投資を行う場合につい て、新たな支援措置を実施
ハロー ワークの体制拡充
社会生活を支える職種で人手不足が深刻化している分野において、ハロー ワークの体制拡充により、地方公共団体と連携した地域全体の人材確保の取 組を支援する。
「年収の壁」への対応を含めた所得向上へ取組
「年収の壁」とは第3号被保険者(被扶養者)として社会保険料負担がなかった者が、一定以上の収入となった場合に おいて、社会保険料負担が発生する、又は、収入要件のある企業の配偶者手当がもらえなくなること により、手取り収入が減少すること。年収 106 万円では厚生年金保険・健康保険に、年収 130 万円で は国民年金・国民健康保険に加入することとなり、それぞれ「106 万円の壁」、「130 万円の壁」と呼ばれている。
(参考)ライフマネーラボ/マネーナレッジBK/税金
【税金-7】専業主婦が仕事を始める際に注意しておくべき
「年収の壁・支援強化パッケージ」を着実に実行
- 若い世代、女性や高齢者など、非正規雇用労働者の所得向上を図るため、いわゆる「年収の壁」を意識せず働くことができるよう、※制度改革を待つことなく、「壁」を乗り越える者を支援する
※制度改革将来の年金給付増につながる被用者保険の適用 拡大とともに、次期年金制度改正に向けた議論の中で制度の見直しにも取り 組むこととしている
- 人手不足に直面する事業主の労働力を確保する
- 年収の壁・支援強化パッケージに関し、 ワンストップで対応できる相談体制を確保する
「106 万円の壁」対応
- 新たに創設したキャリアアップ助成金のコースにより、事業主に対して、申 請人数の上限なく労働者一人当たり最大 50 万円の支援等を行う
- 事業主に 支給されるこの助成金は、社会保障負担の緩和にもつながることで、労働者 の所得増加を後押しする
- 被用者保険への加入を加速化させ将来の年金給付の増額にも資する
「130 万円の壁」対応
- 保険者が扶養認定を行うに際して、被扶養者の就労先が当該被扶養者の収入の増加が一 時的な収入変動であることを証明することにより、扶養に入っていることの 迅速な判断を可能とする
- 企業の配偶者手当の見直しを促進するため、見直 し手順のフローチャートを示す資料を周知する
(参考)「配偶者手当見直し」 厚生労働省 HPより
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