<実用>【医介-3】健康保険からの給付(下巻)

<はじめに> 

「健康保険からの主な給付金」について、解説して参ります。
本稿は、原則、全国健康保険協会(協会けんぽ)HPを参考に、ライフマネーラボが纏めたものです。
より詳細については、同協会HPをご参照下さい。
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/

 紙面の都合上、以下の通り、上巻下巻の2巻に分けて掲載しています。

【医介-2】健康保険からの給付(上巻)

1.療養の給付(被扶養者の場合は家族医療費)
2.入院時食事療養費(被扶養者の場合は家族療養費)
3.入院時生活療養費(被扶養者の場合は家族療養費)
4.保険外併用療養費(被扶養者の場合は家族療養費)
5.療養費(被扶養者の場合は家族療養費)
6.埋葬料、埋葬費(被扶養者の場合は家族埋葬料)
7.出産育児一時金(被扶養者の場合は家族出産育児一時金)
8.出産手当金
9.健康保険組合の付加給付
10.その他の給付等

【医介―3】健康保険からの給付(下巻)

1.高額療養費
2.高額介護合算療養費
3.傷病手当金
本稿理解のために必要な基礎知識(記事)本稿と関連する記事
【医介-1】公的医療保険制度の概要【医介-2】健康保険からの給付(上巻)

高額療養費

高額な医療費を支払ったときは高額療養費で払い戻しが受けられます。

制度の概要

重い病気などで病院等に長期入院したり、治療が長引いたため、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される制度です。

  • 対象は健康保険扱いにおける自己負担分に限るため、入院時の差額ベッド代などは含めません
  • また、保険外併用療養費の差額部分や入院時食事療養費、入院時生活療養費の自己負担額は対象になりません
  • 70歳未満の場合、医療費が高額になることが事前にわかっているときは、事前に保険者の認定を受けて「限度額適用認定証」を病院に提出すれば、窓口で実際に支払うのは、自己負担限度額までとなります。
  • 70歳以上の人の入院の場合においては、同一の医療機関で1ヶ月の窓口負担が自己負担限度額を超えた場合、その月のその後の窓口負担は原則不要となります。
  • 高額療養費の算定は、各月(暦月:1日~末日まで)ごと、同一の医療機関ごと(外来・入院別、医科・歯科別)に行われます。

高額療養費自己負担限度額

被保険者、被扶養者ともに同一月内(暦月:1日~末日まで)の医療費の自己負担限度額は、年齢及び所得に応じて次の計算式により算出されます。

高額療養費自己負担限度額 計算式等(70歳未満の場合)

標準報酬月額自己負担限度額多数回該当※2
83万円以上252,600円+(総医療費※1-842,000円)×1%140,100円
53万円~79万円167,400円+(総医療費-558,000円)×1% 93,000円
28万円~50万円80,100円+(総医療費-267,000円)×1%44,400円
26万円以下57,600円44,400円
市区町村民税非課税者35,400円24,600円

※1 総医療とは保険適用される診察費用の総額(10割)です。
※2 療養を受けた月以前の1年間に、3ヵ月以上の高額療養費の支給を受けた(限度額適用認定証を使用し、自己負担限度額を負担した場合も含む)場合には4ヵ月目から「多数該当」となり、自己負担限度額がさらに軽減されます。

高額療養費自己負担限度額 計算式等(70歳以上75歳未満の場合)

適用区分ひと月の上限額(世帯ごと)多数回該当
外来(個人毎)
現役並み年収約1,160万円~
標準報酬月報83万円以上
課税所得690万円以上
252,600円+
(総医療費-842,000円)×1%
140,100円
年収約770~1,160万円
標準報酬月報53万円以上
課税所得380万円以上
167,400円+
(総医療費-558,000円)×1%
 93,000円
年収約370~770万円
標準報酬月報28万円以上
課税所得145万円以上
80,100円+
(総医療費-267,000円)×1%
44,400円
一般年収約156~370万円
標準報酬月報26万円以下
課税所得145万円未満
 18,000円
(年間上限14.4万円)
57,600円44,400円
低所得者Ⅱ住民税非課税世帯※3 8,000円24,600円
Ⅰ住民税非課税世帯※4
(年金収入80万円以下)
 15,000円

※3 被保険者が市区町村民税の非課税者等である場合です。
※4 被保険者とその扶養家族全ての方の収入から必要経費・控除額を除いた後の所得がない場合です。

高額療養費の負担額軽減措置

70歳未満の者の合算

高額療養費の自己負担限度額に達しない場合であっても、同一月内に同一世帯で21,000 円以上の自己負担が複数あるときは、これらを合算して自己負担限度額を超えた金額が支給されます。(世帯合算)
同一人が同一月内に2つ以上の医療機関にかかり、それぞれの自己負担額が21,000 円以上ある場合も同様です。

70歳以上の者の合算

同一世帯の70歳以上の者(後期高齢者医療制度の医療受給対象者は除く)の自己負担額全てを合算した結果、自己負担限度を超えた場合は、超えた部分が高額療養費として払い戻されます。

全世帯での合算

同一世帯の70歳以上の者(後期高齢者医療制度の医療受給対象者は除く)と70歳未満のものが混在している場合、70歳未満の者の合算対象基準額21,000円を超えているものと、70歳以上の者の自己負担額を合算して、高額療養費の請求ができます。

多数回該当の場合

同一世帯で1年間(診療月を含めた直近12か月)に3回以上高額療養費の支給を受けている場合は、4回目からは標準報酬月額の区分ごとに定められた自己負担額を超えた分が高額療養費として払い戻されます。

70歳以上の場合は、現役並み所得者で年収約770万円までの者と一般所得者については44,000円を超えた分が高額療養費として払い戻されます

長期高額疾病についての負担軽減(健康保険特定疾病療養受療証)

人工透析を実施している慢性腎不全の患者については、自己負担の限度額は 10,000 円となっており、それを超える額は現物給付されるので、医療機関の窓口での 負担は最大でも10,000 円で済みます。
ただし、診療のある月の標準報酬月額が53万円以上である70歳未満の被保険者またはその被扶養者については、自己負担限度額は20,000 円となります。
この他、血友病、抗ウイルス剤を投与している後天性免疫不全症候群の人についても、自己負担の限度額は10,000 円となっています。
なお、人工透析患者などについては、医師の意見書等を添えて保険者に申請し、健康保険特定疾病療養受療証の交付を受け、医療機関の窓口にその受療証と被保険者証を提出する必要があります。

高額介護合算療養費

制度の概要

  • 介護保険の受給者が1年間に支払った医療保険介護保険自己負担額を合算したものが高額になった場合、負担額の比率に応じて、健康保険から支給されます。
  • 介護保険からは、「高額医療合算介護サービス費」高額医療合算介護予防サービス費」として支給されます。
  • 毎年8月1日から翌年7月31日なでに支払った自己負担額が対象となります。
  • 高額介護合算療養費は、医療保険と介護保険の自己負担額を合計し、高額介護合算療養費基準額を引いた後の金額のうち、医療保険の自己負担割合で按分した額となります。

高額介護合算療養費基準額

加入医療保険区分健康保険
介護保険
(70歳未満)
健康保険
介護保険
(70~74歳)
後期高齢者医療保険
介護保険
(75歳以上)
年収約1,160万円~

標準報酬月報83万円以上

課税所得690万円以上

212万円212万円212万円
年収約770~1,160万円

標準報酬月報53万円以上

課税所得380万円以上

141万円141万円141万円
年収約370~770万円

標準報酬月報28万円以上

課税所得145万円以上

67万円67万円67万円
年収約156~370万円

標準報酬月報26万円以下

課税所得145万円未満

60万円56万円56万円
Ⅱ住民税非課税世帯※330万円31万円31万円
Ⅰ住民税非課税世帯※4

(年金収入80万円以下)

19万円19万円

傷病手当金

制度の概要

傷病手当は被保険者が病気やけがのために働けず賃金・給料が受けられない際の所得補償として給付されるものです。次の要件を全て満たしたとき、待期期間終了後の休業から支給されます。

病気、けがのための療養中(自宅療養を含みます)
・療養のために今まで行っていた仕事に就けない状態(労務不能)
・賃金、給料が受けられない(賃金・給料の額が傷病手当金の額より少ない場合は、その差額が支給されます)
・連続して3日以上休んだ場合(待期期間)待期期間には公休日、年次有給休暇取得日もふくまれます

支給される金額

休業1日につき支給開始日以前の継続した12ヶ月間の標準報酬月額を30で除した額の3分の2相当額となります。入院している期間も同様となります。

支給される期間

支給されることとなった日から最長1年6ヶ月間となります。なお、同時に厚生年金保険法による障害年金(国民年金の障害基礎年金を含みます)を受けられるようになったとき、傷病手当金の方が高額な場合は、その差額が傷病手当として支給されます。

老齢厚生年金等と傷病手当金

傷病手当金の支給対象となった人が資格喪失後(退職後)に老齢厚生年金等を受けることができる場合、傷病手当は支給されません。但し、支給される老齢厚生年金等の額が傷病手当金を下回るときは、その差額が傷病手当として支給されます。

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