社会・経済環境を認識する
まず、現在、私たちが置かれている経済、社会環境を認識しておくことが、資産形成の成功の第一歩として重要です。
以下は、現状、資産形成を考える上で、認識しておくべきテーマの例となります。ご参考にしていただければと思います。
少子高齢化、人生100年時代を生き抜くため
自助努力による老後のための資産形成は待ったなしの環境にあります。
年金、健康保険、介護保険、雇用保険等の日本の社会保障制度
世界の先進国と比べ、極めて質の高い優れた制度であることは間違いありませんが、少子高齢化が予想を超えて進展する現実では、今後ますます財政的な厳しさを増していくものと想定されています。将来において、制度自体は継続されるものの現行と比べ100%同等のサービスレベルを維持でききない可能性も考慮の上、ご自身の資産形成を考える必要があります。
「貯蓄から投資へ」
日本の2022年3月末時点で個人(家計部門)が保有する「現金・預金」は、1,088兆円となり、金融資産全体の54.3%を占めています。(日銀統計資料)
「貯蓄から投資へ」(※)との政府方針をうけ、税制面もふくめ、現在具体的施策が検討されています。こうした、政府の制度面、税制面での優遇措置を理解し活用していくことも重要となってきます。
貯蓄:すぐに使うことができ、流動性(換金性)の高いお金
投資:中長期的な目線で増やすためのお金
~金融庁HPから引用
インフレと金利上昇
日本は、最近の20数年間、超低金利かつデフレ(物価、賃金が低下、もしくは上昇しない状況)が続いています。昨年(2021年)後半より世界的物価上昇の流れの中で、今後、日本経済も、インフレの芽が出始め、それに加え、金利もおのずと上昇する可能性が高まっています。
ドル円為替相場:中心回帰か円安トレンドか
2022年3月以降、急速に円安が進んでいます。今後30年の長期的視野で考えた時、これまで過去約30年間続いた長期レンジ相場(1ドル=75円~150円)継続で1ドル=115円前後の中心回帰に進むのか、このまま長期円安トレンドに投入するのか、まさしくターニングポイントに差し掛かっています。
自分の将来を含めた資産・負債状況を知っておく
次に、自分自身に関する以下の事項を知っておくことは、資産形成の設計をする上で、必須の事項となります。
1.現時点で、ご自身が保有する資産、負債を把握しておきましょう。(できれば、財産目録や個人のバランスシートを作っておくことをお勧めします。)
・金融資産(銀行預金残高、債券・株式保有残高(時価)、投資信託、生命保険及びその他金融資産)
・不動産(投資不動産)、金等
・その他、投資用美術品や骨董品など
・持ち家の資産価値と住宅ローンの残高、期限、金利(変動・固定)
・その他負債(自動車ローン、カードローン等)
2.将来得ることができる退職金、厚生年金、企業年金額(確定給付、確定拠出等)、個人年金等の推定受給金額など
3.ご自分の家族、親族について、可能な限り以下の状況を把握しておきましょう
・子供の教育状況と最終卒業までの費用見込み
・親等の資産状況、及び、相続関係の把握
資産形成の目的及び目標の数値化
資産形成を開始するにあたって、資産形成の目的及び目標の数値化はもっとも重要なポイントとなります。
今後の人生をどう生きていくかの目的が定まっていれば、おのずと、資産形成の目標(いくら貯めるか)は定まってきます。
ただ、漠然と、老後のために1億円程度蓄えておきたいという目標もありますが、何故1億円必要なのかを、できるだけ具体的なライフプランを立てておくことが重要です。
繰り返しになりまが、お金は手段であり、お金自体を目標に掲げることは自由ですが、より豊かな実りある人生をお望みであれば、是非自分の人生の目的達成のための資産形成を考えていくことをお勧めします。
例えば以下のような目的が挙げられます。どれも、夢のある目的で、資産形成するモチベーションが高まります。
- 50歳代でFIRE(Financial Independence, Retire Early:経済的自立と早期退職)し、憧れの軽井沢に居を構え、夫婦ともにそれぞれの趣味に没頭したい。そのために、軽井沢に一戸建て持ち家+1億円を用意したい。
- 退職後、夫婦2人でつつましくも安心して生活できるように、65歳までに2,000万円用意したい。
- 退職後、夫婦2人で移住も視野にいれた長期海外生活をおくりたい。そのための費用を、定年退職までに3,000万円を準備しておきたい
- 2人いる子供たち(1歳と3歳)のために、海外留学を含め最高レベルの教育の機会を提供したい。教育資金としてトータル5,000万円程度の予算を確保しておきたい。
資産形成の原資について
上述の資産形成の目的と目標が定まったら、その原資となるお金の捻出についてできる限り具体的に検討し、以下の手順で資産形成達成見込み額を試算してみましょう。
① 上述2のご自身の資産負債状況から、資産形成の原資として見込める資産を特定する。
② ご自身の年収から原資として捻出可能な金額を算出する。
算出に当たっては、以下の点がポイントとなります。
POINT・現在の年収から無理なく捻出できる金額を測定する。より確実な検討をするためには、ご自身の今後のライフマネー(自分の人生に必要となるお金)のキャッシュフロー表を作成することです。
(この際、クレアライフパートナー等の専門家のアドバイスをお受けになることをお勧めします)
・将来の年収アップ、及び、キャリアアップがある程度想定できる場合はそれらを加味した捻出金額も算出しておきましょう。
上述①、②から資産形成達成見込み額を合理的な算出方法で試算してみましょう。合理的な算出方法とは、資産形成によって期待できる運用収益率を使用し複利計算にて導き出す方法です。(詳細は本ナレッジバンクに投稿予定です)
資産形成の目標のフィジビリティの判断
次に、資産形成の目標のフィジビリティ(達成可能性)の判断を行います。
目標とする金額と上述で試算した資産形成達成見込み額に大きな乖離が無ければ、資産形成を開始する準備は整ったことになります。具体的な投資手法や、投資対象の選定に入ることができます。
一方、乖離が大きく、このままでは達成不可能と判断された場合は、以下の何れか、または、複数の合わせ技を検討することになります。
Tips1.目標の見直し・再検討、あるいは、目的自体の再考
2.ライフマネーの支出項目の見直し(節約、あるいは過大な保険契約の見直し等)
3.収入増加の施策(転職、副業、配偶者の就職等)
検討の濃淡は、ご自身の目的に対する拘り度合い、及び、ご自身の人生観によるところが大きいということは言うまでもありません。
また、この作業により、資産形成あるいはお金に対する考え方を、配偶者を始めご家族と議論し、認識を共有する機会にもなります。
あとがき
本稿は、資産形成を始める前のプロセスについて記載しましたが、これらはあくまでも、一定の前提のもと一般的なモデルを示したもので、絶対的なものではないことご留意ください。皆様の一つの参考資料として活用いただければ幸いです。
そして、皆さまの人生の目的達成が叶うよう、是非、資産形成が成功することをお祈りいたします。
しかしながら、資産形成を開始された後、取り巻く環境変化、あるいは、ご自身のライフスタイルの考え方の変化や家族構成の変化も当然のこととして起こります。それに従い、当初の人生の目的や目標も、時とともに変化していく可能性があります。
資産形成自体についても、それに合わせて軌道修正、もしくは、方向転換の必要性に迫られる事態となるとも考えておくべきでしょう。
筆者は、資産形成における投資行為は、とてもエキサイティングで希望の持てる楽しいものと考えています。
無謀な投資や、苦しむ投資行為は極力避けて、未来を夢見ながらも、足下の現実を冷静に受け止め、柔軟な姿勢をもって資産形成を実践していただくことを願います。
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