公的遺族年金について
公的遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった人が死亡したときに、その人によって生計を維持されていた遺族(配偶者、子ども、孫、父母、あるいは、祖父母等)が受けることができる年金です。
公的遺族年金には、「遺族基礎年金」及び「遺族厚生年金」があり、死亡した人の年金の加入状況などによって、いずれかまたは両方の年金が支給されます。
会社にお勤めのサラリーマン(厚生年金の被保険者)またはサラリーマンであった人が死亡した場合は、「遺族基礎年金」に加え、「遺族厚生年金」が、要件を満たした遺族(生計を共にしていた配偶者、子ども、孫、父母、あるいは、祖父母等)に給付されます。
公的遺族年金は、万が一の場合、残されたご家族の生活費のベースとなるものです。
しかし、制度は少し複雑で、死亡した人の保険料の納付状況や、遺族年金を受け取る人の年齢・優先順位などの条件をすべて満たしている場合に、遺族年金を受け取ることができます。
ライフマネープランを考える上で、大変重要なポイントとなりますので、その制度や仕組みについて、是非知っておいていただきたいと思います。
本稿の最後尾に、サラリーマンが死亡した場合の、遺族基礎年金及び遺族厚生年金(中高齢寡婦加算を含む)の受給についての事例(条件別)をまとめましたので、ご参考にしてください。
遺族基礎年金
サラリーマンの遺族が遺族基礎年金を受けるための要件
遺族厚生年金の受給要件(後述)を満たしているサラリーマンの遺族は、遺族基礎年金を同時に受けることができます。
(参考)国民年金第一号被保険者(自営業者とその家族や学生など)の遺族が遺族基礎年金を受給できる要件
・国民年金の被保険者である間に死亡したとき
・国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき
・老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき
・老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したとき
遺族基礎年金の受給対象者
遺族基礎年金は、上述(1)の通り、遺族厚生年金の受給要件を満たした人が死亡したとき、その人に生計を維持されていた「① 子のある配偶者」、または、「② 子(※1)」が受給対象者となり、遺族厚生年金(後述)とあわせて受給できます。
(※1)子:18歳になった年度の3月31日までにある人、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人
遺族基礎年金の年間の年金額(令和5年4月分から)
① 「子のある配偶者」が受け取る場合
- 67歳以下の方:795,000円 + 子の加算額(※2)
- 68歳以上の方:792,600円 + 子の加算額(※2)
(※2)子加算額:
1人目および2人目の子の加算額 各228,700円
3人目以降の子の加算額 各76,200円
② 「子が受け取る」場合(配偶者がいない場合)
- 次の金額を子の数で割った額が、1人あたりの額となります。
795,000円+2人目以降の子の加算額(※2)
遺族厚生年金
サラリーマンの遺族が遺族厚生年金を受けるための要件
次の①から⑤のいずれかの要件を満たしている人が死亡したときに、その遺族に遺族厚生年金が支給されます。
同時に、遺族基礎年金についても支給されます。
ただし、①、②の場合は保険料納付済期間が国民年金加入期間の3分の2以上であること、また、④、⑤の場合は保険料納付済期間、保険料納付済期間、及び合算対象期間が合計25年以上ある場合に限ります。
① 厚生年金保険の被保険者が在職中に死亡したとき
② 退職等で厚生年金の被保険者ではなくなった人が、在職中に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
③ 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき
④ 老齢厚生年金の受給権者・受給資格期間のある人が死亡したとき
遺族厚生年金の受給対象者
死亡した人に生計を維持されていた以下の遺族のうち、最も優先順位の高い人が受け取ることができます。
なお遺族基礎年金を受給できる遺族の人も、あわせて受給できます。
① 18歳未満の子(※3)のない妻
夫(被保険者)の死亡時、30歳未満の妻は5年間のみ受給となります。
夫(被保険者)の死亡時、30歳以上の妻は終身の支給となります。
② 18歳未満の子(※3)のある配偶者(夫or妻 )
被保険者の死後、配偶者は終身の支給となります。
③ 55歳以上の夫or父母or祖父母(受給開始は60歳から終身支給となります。
受給開始は60歳から終身支給となります。
ただし、夫に18歳未満の子(※3)がいる場合、子の受給権に優先して55歳から夫の遺族基礎年金に併せて遺族厚生年金が受けられます。
④ 18歳未満の子(※3)
⑤ 18歳未満の孫(※3)
(※3)18歳未満の子、孫
18歳になった年度の3月31日までにある方、または 20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方を意味します
(優先順位)
第1優先 子のある妻/子のある55歳以上の夫/子(18歳未満)
第2優先 子のない妻/子のない55歳の以上の夫
第3優先 55歳以上の父母
第4優先 孫(18歳未満)
第5優先 55歳以上の祖父母
遺族厚生年金の年間の年金額
遺族厚生年金の年金額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3(75%)の額となります。
① 被保険者の厚生年金被保険期間が300月(25年)未満の場合
上述「サラリーマンの遺族が遺族厚生年金を受けるための要件」の受給要件①、②および③に基づく遺族厚生年金の場合
報酬比例部分の計算において、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。
従って、死亡した被保険者の加入期間が短い場合でも、25年間分に相当する遺族厚生年金が支給されます。
(参考) 被保険期間300月の場合の報酬比例受給金額と遺族厚生年金額(年額)
② 65歳以上で老齢厚生年金を受け取る権利がある方が、配偶者の死亡による遺族厚生年金を受け取る場合
「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」と「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自身の老齢厚生年金の額の2分の1の額を合算した額」を比較し、高い方の額が遺族厚生年金の額となります。
中高齢寡婦加算と経過的寡婦加算
① 中高齢寡婦加算
次のいずれかに該当する妻が受ける遺族厚生年金には、40歳から65歳になるまでの間、596,300円(年額)が加算されます。
これを、中高齢寡婦加算といいます。
ただし、老齢厚生年金の受給権者または受給資格期間を満たしている夫が死亡したときは、死亡した夫の厚生年金保険の被保険者期間が20年以上の場合に限ります。
- 夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻。
- 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻(上述の※3参照)が、子が18歳到達年度の末日に達した(障害の状態にある場合は20歳に達した)等のため、遺族基礎年金を受給できなくなった(失権した)とき。
② 経過的寡婦加算
1956年4月1日以前生まれの妻には、65歳から中高齢寡婦加算に代えて経過的寡婦加算が支給されます。
経過的寡婦加算は、妻の生年月日に応じて定められた額となっています。
公的遺族年金給付の事例
(事例1) 18歳未満の子のある妻(1)
(事例2) 18歳未満の子のある妻(2)
(事例3) 18歳未満の子のない妻(1)
(事例4) 18歳未満の子のない妻(2)
(事例5) 55歳以上で子のある夫
(事例6) 55歳未満で子のある夫
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