【企情-1】従業員ストックオプション制度(その1)~基本編

ストックオプションとは

ストックオプションの仕組み

  • ストックオプションとは、ある株式について、ある一定の価格“行使価格”or“ストライクプライス”と呼びます)で、買うことのできる権利“コールオプション”と呼びます)や売ることのできる権利“プットオプション”と呼びます)を指します。
  • ストックオプション取引とは、上述のオプションを、市場価格或いは合理的に計算された価格“オプション価格”と呼びます)で買ったり(“オプションの買い”)、売ったり(“オプションの売り”)することを指します。

  • オプションの権利行使とは、オプションの買手(コールオプションor プットオプションの買手)が、権利を行使して、当該株式を行使価格で買う、または、売ることです。
    オプションの買手は、市場等の状況次第では権利を行使しないことも可能です。

オプションの売手と買手

 

 

従業員ストックオプション制度

従業員ストックオプションとは

会社従業員に対して、自社株のコールオプション売却あるいは無償で供与するする(従業員購入あるいは無料で受領する)制度です。すなわち、従業員は、自身が所属する会社の株式を購入する権利を有償あるいは無償で買うことを意味します。

従業員ストックオプションは、米国で1970年代以降、有能な従業員の確保のために利用されはじめました。
日本でも1990年代に一部外資系企業の日本法人で活用されはじめ、1997年の商法改正によって日本企業でも全面解禁されました。
また、2022年に施行された持ち株会社制度の導入により、持ち株会社がグループ企業の株式を保有し、それを従業員に対してストックオプションとして提供することが可能となりました。

従業員ストックオプション導入の目的

従業員のモチベーション向上

従業員が企業の成長や成功に直接的に関与する機会を提供します。
将来株式を購入することで利益を得る可能性があるため、従業員は企業の目標達成や業績向上に対して強いモチベーションを持つことが期待されます。

従業員の忠誠心の醸成

従業員が長期的な視野で企業に関わることを促します。ストックオプションを保有することで、従業員は企業の株主としての意識を持つことができ、組織の目標達成に向けた忠誠心や責任感を高める効果があります。

優秀な人材の確保と留任

競争の激しい人材市場で優秀な人材を引き付けるためのツールとなります。
将来株式を購入する権利が与えられることで、報酬パッケージの一部として魅力的な要素となります。
また、ストックオプションの保有が将来の報酬や資産形成の機会となるため、従業員の留任を促進する効果もあります。

企業の資本構造やキャッシュフローの効率化

従業員ストックオプションは、企業の資本構造やキャッシュフローの効率化に寄与することがあります。
ストックオプションを報酬として提供することで、従業員に現金報酬を支払う必要がなくなり、企業のキャッシュフローを節約することができます。

従業員ストックオプション導入に関する最近の潮流

スタートアップ企業での導入促進

スタートアップ企業がストックオプション制度を導入するケースが増えています。
ストックオプションは、従業員のモチベーション向上や優秀な人材の確保に効果的であり、成長段階のスタートアップ企業にとって魅力的な報酬制度となっています。

多様な従業員層への拡大

以前は、主に役員や幹部層に対してストックオプションが提供されるケースが多かったですが、最近では一般従業員や新入社員など、より広い範囲の従業員層への提供が進んでいます。
これにより、従業員全体のモチベーション向上や企業に対する忠誠心の醸成が図られることが期待されています。

持ち株会社制度の影響

2022年に施行された持株会社制度の導入により、企業グループ内でのストックオプションの活用が促進されています。
持株会社制度では、持ち株会社がグループ企業の株式を保有し、それを従業員に対してストックオプションとして提供することが可能となりました。

規制の強化

近年、ストックオプション制度に関する規制の強化が行われています。
例えば、公正取引委員会によるストックオプションの競争法上の規制や、会計基準の改定による報酬計上の厳格化などがあります。
これにより、企業はより透明性の高い報酬制度の運用や適切なガバナンスの確保に注力する必要があります。

 

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