外国為替相場と外国為替市場
第1章で説明した通り、(狭義の)外国為替とは、ある国の通貨と他の国の通貨を交換する取引をいいますが、その交換比率のことを、外国為替相場(外国為替レート)或いは、単に為替相場(為替レート)と呼びます。
外国為替レートの表記
例えば、米ドルと円の交換の比率(米ドル・円為替レート)は、日本においては、以下のように、1米ドルに対する円の価格(対価)が、以下のように表記されます。
1米ドル=150.00円(※)
(1米ドルと150円が同価値であることを意味します)
自国通貨建てと外貨通貨建て
為替相場(レート)は、必ず2つの通貨(ペア通貨)で構成されます。
日本における自国通貨は円ですので、大概の場合、円がペア通貨の一つになり、もう片一方が、外貨(米ドル、ユーロ、ポンド、元等)となります。
為替レートの表し方には、以下の2つがあります。
自国通貨建て
外国の通貨1単位を自国の通貨で表す方法
日本においては、1米ドル=150円、1ポンド=180円といった自国通貨建ての表示が一般的です。アメリカも一般的には自国通貨建て表示が主流です
外国通貨建て
自国の通貨1単位を外貨で表す方法
イギリスでは、1ポンド=0.005円、1ポンド=1.2587米ドルといった外国通貨建ての表示が一般的です。ヨーロッパも、同様に外国通貨建ての表示が一般的です。
外国為替市場
銀行などの金融機関(市場参加者)が、世界中から参加し、それぞれが、通貨の交換(通貨の売買)を行う場が外国為替市場です。
市場と言っても、魚市場や青果市場のように、特定の場所や建物に集まり取引を行うのではありません。
市場参加者は、それぞれのオフィス等から、個々に直接、電話や電子機器等を通じて行う取引や、外国為替仲介業者(為替ブローカー)が提供するオンライン端末の取引画面を操作することにより、特定多数の市場参加者と行う取引があります。
最近では、コンピューターを相互に接続し、大量かつ瞬時に取引を成立させる仕組みもあります。
市場参加者は、銀行の他、一部証券会社、中央銀行、為替ブローカー等に限定され、「インターバンク市場」と称されています。
インターバンク市場での取引は、標準化されていて、瞬時に大量の取引が可能となっています。
取引金額は、対米ドル取引では、百万米ドルが最低取引金額(最低ロット)となっています。
外国為替市場では、ある通貨に対する需要(買いたい量)と供給(売りたい量)によりその交換比率である為替レートが決まり、為替の売買取引が成立します。
したがって、需要と供給の変化により、為替レートは時々刻々と動きます。
外国為替市場は、取引の時間帯により、中心となって取引を行う市場参加者が存在す都市のことを指して、「東京外国為替市場」、「香港・シンガポール市場」、「ロンドン為替市場」、そして、「ニューヨーク為替市場」等と名付けられています。
日付変更線の位置により、1日の始まりは、前日のニューヨーク市場を受け継ぎ、ウエリントン(ニュージーランド)ではじまり、シドニー(オーストラリア)、東京(日本)、香港(中国)、シンガポール(シンガポール)、フランクフルト(ドイツ)、ロンドン(英国)、そしてニューヨーク(米国)と続いていきます。
平日は、1日24時間どこかの外国為替市場が活発に取引されていることから、世界中の市場が分断されることなく、市場参加者はいつでも、市場が決める正当な価格で売買することが可能となります。
外国為替相場の見方(日経電子版)
以下は、日経電子版(有料会員向け)のマーケット欄に掲載されている、「世界の市況(為替)」から、 2023年11月22日の10時56分時点の米ドル/円の為替相場(為替レート)の画面コピーを引用したものです。
米ドル・円 為替相場
148.25 – 148.26 (10:56) +0.75(+0.50%)とあります。
これは、日本経済新聞社が市場情報提供業者からの提供をうけ、2023年11月22日の午前10時26分時点の東京インターバンク市場での米ドル・円の為替取引における、気配値(インディケーションレート)を表しています。
そして、この時点では、前日の東京インターバンク市場の終了時(17:00)と比べ75銭高い(ドル高・円安)であることを表示しています。
148.25(金額が小さい)のことをビット(買い気配値)、148.26(金額の大きい)のことをオッファー或いはアスク(売り気配値)と呼びます。
米ドル・円 為替相場推移グラフ
表示期間は、グラフの下欄にある『1日、3ヶ月、6ヶ月、1年、5年』から選ぶことができます。
本グラフは5年を選択しています。
2018年11月23日から現時点(2023年11月22日)までの米ドル・円の為替レート推移を見ることができます。
2021年までは、1米ドル=110円前後でしたが、2022年初より上昇し、現在(2023年11月)では、1米ドル=150円前後となっていることがわかります。
円安と円高
上述の日経電子版の画面に表示された米ドル・円相場(148.25 – 148.26)は、2023年11月22日の午前10時26分時点のある瞬間を表示したものです。
実際の市場では、様々な動機(注)から、多くの米ドルを買いたい市場参加者や、売りたい市場参加者が、為替レートをめぐり、せめぎ合っています。その力関係で、相場は常に上下運動を繰り替えしています。
(注)様々な動機については、為替相場の決定の重要な要因となります。本講座の主要なテーマでもあり、章を重ねるごとに少しずつ紐解いて参ります。
まず、円安と円高について、整理しておきましょう。頭では分かっていても、時々、混乱することがありますので、しっかりと基本をおさえておきましょう。
円安、円高の考え方
米ドル等の外国通貨に対し、
円の価値が相対的に高くなることを円高、
円の価値が相対的に低くなることを円安
といいます。
米ドル等の外貨をモノとして捉え、円で米ドルというモノを買ったり売ったりすることとを考えれば、円高や円安の意味を理解しやすいかも知れません。
日本において自国通貨建て表示の為替相場の場合
例えば、ある日、日本の空港で、1米ドル=150円と為替レートの表示がありました。米ドル紙幣10枚(=10米ドル)を買うためには、150円×10枚=1,500円と計算されます。すなわち、10米ドルは1,500円となります。
翌日、1米ドル=151円(+1円)と為替レートの表示が1円高くなっていました。
昨日と同様に、米ドル紙幣10枚買おうとすると、151円×10枚=1,510円と計算されます。すなわち10米ドルは1,510円と10円高くなりました。1米ドル紙幣の単価が1円値上げされたため、お金(円)を多く払う必要があるためです。
よって、本日、米ドル紙幣10枚を買うと、昨日より、10円損することになります。
すなわち、自国通貨建ての為替レートの場合、1米ドル=150円から151円に1円上昇する(価格が上がる)ということは、米ドルの価値が上がり、反対に円の価値が下がることを意味し、これを自国通貨の円を中心に考えると円安という言い方になり、米ドルを中心に考えるとドル高ということになります。
外国通貨建て表示の為替相場の場合(イギリスなど)
一方、イギリスを訪れると、空港やホテルでは、為替レートの表示が、一般的に、1円=0.0056ポンドと外国通貨建表示に変わります。(自国通貨建て表示に変換すると、1ポンド=1/0.0056=179円となります)
イギリスでは外国通貨建ての表示が一般的になるためです。
例えば、昨日、1円=0.0056ポンドと表示があり、本日は1円=0.0057ポンド米ドルに0.0001価格が上昇したとします。
1ポンド紙幣10枚を、本日、円で買うと昨日に比べ31円安く買ええることになります。
昨日:1円=0.0056ポンドの場合 1/0.0056×10枚=1,785円
本日:1円=0.0057米ドルの場合 1/0.0057×10枚=1,754円(昨日比31円安)
すなわち、外国通貨建ての為替レートの場合、1円=0.0056ポンドから1円=0.0057ポンドへ0.0001ポンド上昇する(価格が上がる)ということは、円の価値が上がり、反対にポンドの価値が下がることを意味し、円を中心に考えると円高という言い方になり、ポンドを中心に考えるとポンド安ということになります。
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