<実用>【税金-6】アルバイトやパートの収入にかかる所得税

本稿理解のために必要な基礎知識(記事)本稿と関連する記事
【税金-2】所得税の基本的しくみ【税金-5】給与所得者(会社員)の所得税
【税金-3】所得税の控除のしくみ【税金-7】専業主婦(夫)が仕事を始める際の注意点
【税金-8】所得税の源泉徴収制度

パートやアルバイトをしてお金を稼ごうとすると、どうしても所得税を気にしてしまいます。
特に、配偶者や親に扶養されている場合は、自分自身の問題だけではなく、家計を一つにする配偶者や親など家族にも影響が及ぶことがあります。
パートやアルバイトを始める際に知っておくべき以下の点を中心に説明いたします。

POINT1.所得税が発生する給料(年収)の額
2.所得税が発生した時に起こる問題点
3.払い過ぎた所得税を取り戻すにはどうしたら良いのか?

所得税が発生する給料(年収)の額

パートやアルバイトで働いている方(以下「あなた」)にも所得税は課税されます。
所得税は本来、ある年の1月1日から12月31日の間に稼いだ年間の給料に対して課税されます。しかし、毎月の給与明細書などを見ると所得税が差し引かれていることもあります。(源泉徴収と言います。)
したがって、所得税の課税について考える際は毎月の場合年間収入(年収)の場合それぞれ理解する必要があります。

月給から天引きされる所得税(源泉徴収)

予め、月ごとに仮の所得税が給料から天引きされている場合、それを源泉徴収と言います。あなたがパートやアルバイトで働く場合、毎月いくら稼ぐと所得税が発生し源泉徴収がされるのでしょうか?
毎月の所得税は、給与所得の源泉徴収税額表(月額表)を用いて計算されます。

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2021/data/01-07.pdf
(国税庁HPより、クリックすると別ウィンドウで画像を参照できます)

源泉徴収税額表を眺めてみると、と書かれた列に数字が記入されています。
勤務先の年末調整で、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書と呼ばれる書類を勤務先に提出しているかどうかでどちらの列を見るかが異なります。

・提出している場合は甲欄
・提出していない場合は乙欄

この扶養控除等(異動)申告書は、1つの勤務先にしか提出出来ないため、複数の勤務先に勤務している場合、給与額が最も多い勤務先に提出するのが一般的です。
そのため、源泉徴収が発生するのは
・扶養控除等(異動)申告書を提出している場合:源泉徴収税額表(甲欄)に数字の記載がある場合
88,000円以上で発生します
・扶養控除等(異動)申告書を提出していない場合:源泉徴収税額表(乙欄)
 →所得税は常に発生します
ということになります。
※話を簡略化するために社会保険料等の控除額を0円としています。

年間収入(年収)と所得税の関係

一方、年間で考えた場合、あなたがどのくらい稼ぐと所得税が発生するようになるのでしょうか?
今まで、所得税は月給に課税されると表現してきましたが厳密にいうと(年間)課税所得金額に所得税が課税されます。
所得税が発生する最低の給与額を把握する際に、課税所得金額の求め方を知っておくことが重要です。
以下で確認してみましょう。

  • 課税所得金額の求め方
    課税所得金額 = 収入 - 必要経費 -所得控除

パートやアルバイトの人の場合、必要経費は給与所得控除、所得控除は基礎控除を指すと考えてください。
それぞれ、給与所得控除の額が55万円(最低額)、基礎控除の額が48万円です。
したがって、55+48=103(万円)より103万円より多く稼ぐと所得税が発生することになります。

控除項目の詳細については、【税金-3】所得税の控除のしくみを参照下さい

所得税が発生すると問題となること

あなたの給与所得が103万円を超えると、所得税が発生します。そして、所得税が発生すると、様々な場面で問題が発生します

(参照) 【税金-7】専業主婦(夫)が仕事を始める際の注意点 

扶養控除の問題

所得税が発生すると、あなたの扶養者(あなたの配偶者或いは親などの納税者)の扶養控除の適用が外れます。
したがって、所得税が発生することであなたの扶養者に適用されていた38万円の扶養控除がなくなります。
これは、扶養者の所得税率が10%と仮定した場合、38×0.1≒3.8(万円)分の所得税が、あなたの扶養者に追加的に課税されることになります。

また、学生などの19歳から23歳の方が103万円以上稼いだ場合、この時の扶養控除は63万円と設定されているため、あなたの扶養者に63万円の追加てきな課税所得金額が生じます。すなわち、扶養者の所得税率が10%であれば、63×0.1=6.3(万円より、6.3万円余分にあなたの扶養者に所得税の負担が増えることになります。

配偶者控除の問題

あなたが103万円以上、パートやアルバイトで給料を稼いだ場合、あなたの扶養者に適用されていた配偶者控除がなくなります。
配偶者控除の控除額あなたの扶養者の所得やあなたの年齢により、細かく分類されています。そして、配偶者控除の適用が除外されても、配偶者特別控除の適用が受けられる可能性があります。

パートで働く方が所得税と配偶者控除について考える際には、

POINT配偶者控除から配偶者特別控除に切り替わるときに発生する控除差額
所得の増加額を比較し、103万円の壁を超えて多く稼ぐべきかどうかを判断する必要があります。

配偶者控除・配偶者特別控除の詳細は、以下記事を参照下さい
【税金-4】所得税の配偶者・配偶者特別控除及び扶養控除

社会保険料制度への加入問題

専業主婦(夫)であったが妻(夫)が、仕事を始めた場合には、健康保険や厚生年金等の社会保険制度への加入の問題が発生します。

(詳細7参照) 【税金-7】専業主婦(夫)が仕事を始める際の注意点 

  • 年収が106万円以上の場合
    勤務先の条件により、厚生年金及び健康保険に加入しなければならない場合があります。
    この場合、扶養者の所属する厚生年金及び健康保険から脱退し、就業先の厚生年金及び健康保険に加入し、その保険料を負担する必要がでてきます。
  • 年収が130万円以上の場合
    ご本人が独立して厚生年金及び健康保険に加入し、その保険料を負担しなければなりません。

源泉徴収された所得税を取り戻す

所得税を取り戻す

所得税は本来、会社側が年末調整を行うことで自動的に計算されます。
そして、余分に所得税を払いすぎている方にはそこで還付があります。

しかし、パートやアルバイトの場合この限りではない場合が多々あります。
また、1月から12月の間に別の仕事に切替えたり掛け持ちしている方も年末調整されない可能性があります。

さらに、医療費を多く支払っている方は所得税が減額される可能性がありますが、年末調整ではそれは考慮されません。

ある特定の月に多く稼いだ場合

先に述べた通り月88,000円以上稼ぐと所得税が仮に課せられ、給料から天引きされます。しかし、年間で給料が103万円以下であれば所得税は、本来課せられません。
例えば、2月、3月、8月、9月は月に15万円稼ぎ、その他の月は毎月5万円の稼いでいる場合年間収入では15万円×4カ月+5万円×8カ月=100万円となり、所得税は非課税です。しかし、月15万円稼いだ4カ月は所得税が給料から天引きされています。
ちなみに、源泉徴収税額表からその額は11,920円であることが分かります。
この場合、確定申告の手続きを踏むことで取り戻すことができます。

また、次のような方も所得税を払いすぎている可能性があります。

確定申告について

確定申告は、原則2月16日から3月15日の間に行います。
しかし本件のような場合は、確定申告の中でも還付申告と呼ばれる手続きに該当し、この場合必ずしも上述の期間が絶対的な期限とはなりません。
還付申告の期限は次のように定められています。
確定申告の必要がない場合の還付申告は、還付申告をする年分の翌年1月1日から5年間行うことができます。
つまり言い換えれば、今から5年前の所得に課税されていた所得税は取り戻すことができるということです。

確定申告の具体的な手順などは別記事に譲るとしますが、国税庁のHPにある確定申告書等作成コーナーから書類を作ることができます。
別途必要な書類等も用意する必要はありますが、作成した書類は郵送等で税務署に送ることもできます。2021年度からは、オンラインで申告(e-TAX)が稼働し、領収書等の添付も不要となっています。(但し、保管義務はあります

確定申告と聞くと少し煩わしいイメージを抱いてしまうかもしれませんが、こういった便利な機能もあるので是非参照してみて下さい。

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