<実用>【税金-7】専業主婦が仕事を始める際に注意しておくべき点

本稿理解のために必要な基礎知識(記事)本稿と関連する記事
【税金-2】所得税の基本的しくみ【税金-5】給与所得者(会社員)の所得税
【税金-3】所得税の控除のしくみ【税金-6】アルバイトやパートにかかる所得税

**本稿の説明の前に**本稿の説明をわかり易くするために、以下の状況を前提とさせていただきます。
専業主婦 :妻  税制上、夫の扶養対象となる立場。
給与所得者:夫  税制上、妻を扶養する立場。

説明の前提

専業主婦(妻)の立場

  • 給料は受けていないので本人(妻)にかかる所得税はゼロです。
  • 税法上、給与所得のある夫に扶養されている立場にあります。
  • 健康保険制度については、夫の加入する健康保険に扶養家族として加入していて、本人の健康保険料の負担はありません。
  • 厚生年金保険制度については、夫の加入する厚生年金に扶養家族として加入していて、国民年金の第3号被保険者に該当します。国民年金保険料の負担はありません。

夫の立場

  • 会社員(給与所得者)として給料を受け取り、所得税、住民税を納税。
  • 健康保険及び厚生年金保険料等の社会保険料を負担している。
  • 配偶者である妻と子供は扶養対象

専業主婦(妻)が仕事を開始し収入を得る場合の注意点

妻の給与収入が年間103万円を超えた場合:本人の所得税が発生

妻の年間収入が103万円を超えると課税所得金額が発生し、本人自身が所得税を納める必要が出てきます。いわゆる「103万円の壁」といわれているものです。

課税所得金額=年間給与収入―給与所得控除額-基礎控除額 > 0
ここで  給与所得控除=55万円(最低控除額)
      基礎控除額=48万円
すなわち 年間給与収入>103万円 となり所得税が課税されます。

(参照)【税金-3】所得税の控除のしくみ 給与所得控除の計算

妻の年収と夫の扶養控除額の関係

103万円の壁

  • 妻の年収が103万円を超えてしまうと、税法上、妻は夫の扶養対象から外れることになります。それに伴い、子供の扶養控除及び配偶者控除は適用されなくなりますが、配偶者控除枠は同額(38万円)で配偶者特別控除に引き継がれます。
  • 同時に、夫の勤務先の就業規則等に寄りますが、配偶者手当、扶養手当、家族手当等(※)の支給がなくなる場合がありますので注意が必要です。
    (※)配偶者手当等法的強制力のあるものではなく、企業の福利厚生の一環として支給されるものです。
  • 妻の年収が150万円を超えると、夫の所得税の配偶者特別控除の適用額が低減していきます。さらに、201.5万円を超えると、配偶者特別控除がゼロになります。

妻の年収と夫の扶養控除額の関係

夫の年収(課税所得金額)妻の年収夫の扶養控除額
1,120万円以下(900万円以下)103万円まで38万円(配偶者控除)
150万円まで38万円(配偶者特別控除)
201.5万円まで36万円~3万円(配偶者特別控除)
1,120万円超1,170万円以下(900万円超950万円以下) 103万円まで26万円(配偶者控除)
150万円まで26万円(配偶者特別控除)
201.5万円まで24万円~2万円(配偶者特別控除)
1,170万円超1,220万円以下(950万円超1,000万円以下) 103万円まで13万円(配偶者控除)
150万円まで13万円(配偶者特別控除)
201.5万円まで12万円~1万円(配偶者特別控除)
1,220万円超 (1,000万円超) 103万円まで0円
150万円まで
201.5万円まで

出所:国税庁HP 家族と税 
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/02_2.htm

(参照) 【税金-4】所得税の配偶者・配偶者特別控除及び扶養控除

妻の年収と社会保険制度の関係

正規雇用・非正規雇用(パート・アルバイト)に拘わらず、本人(妻)の収入及び一定の条件のもと、厚生年金及び健康保険等の社会保険料の負担が生じてきます。

本人(妻)の年収が106万円以上となった場合

勤務先での雇用条件により、厚生年金及び健康保険に加入しなければならない場合があります
この場合、夫の所属する厚生年金及び健康保険から脱退し、就業先の厚生年金及び健康保険に加入し、その保険料を負担する必要がでてきます。

  • 勤務先の雇用条件
    以下のすべてがあてはまれば、本人自身が独自に勤務先の厚生年金および健康保険に加入します。
    ・1週間あたりの決まった労働時間が20時間以上であること
    ・1ヶ月あたりの決まった賃金が88,000円以上であること(年収106万円以上)
    ・雇用期間の見込みが1年以上であること(※2022年10月からは撤廃されます)
    ・学生でないこと
  • 勤務先が以下のいずれかに該当すること
    ・従業員数が501人※以上の会社(特定適用事業所)で働いている
    ・従業員数が500人以下の会社で働いていて、社会保険に加入することについて労使で合意がなされている
    ※2022年10月からは101人以上、2024年10月からは51人以上に変更されます。
  • 妻の年収が130万円以上の場合(130万円の壁)

ご本人が独立して厚生年金及び健康保険に加入し、その保険料を負担しなければなりません。また、当然に、夫の所属する厚生年金及び健康保険から脱退することになります。

  • 税金、および、保険料負担を生じますが、以下のメリットも発生します。

POINT厚生年金については、将来の老齢厚生年金の受給資格を得る等のメリットを受けることができます。
・健康保険については、扶養家族ではカバーされない傷病手当金等の給付を受ける資格を得ます。

参考:日本年金機構 HP 『従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き』
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha1/20141202.html

<おわりに>

より高い感性と創造性、および、多様性が必要とされる今、さらなる女性の社会進出が期待されています。また、一方で、現実問題として、少子高齢化の進行による労働人口減少を補う必要もあります。
こういった「103万円の壁」や「130万円の壁」にとらわれ過ぎず、のびのびと社会で活躍できるライフスタイルを優先したいと考える方も多いと思います。そのための、社会環境づくりが急務といえましょう。

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