<基礎> 【金商-2】株式の基本

株式の基礎知識

 株式とは

株式とは、株式会社を設立するとき、或いは、追加に資金を調達する際に、その証として資金の出し手(出資者)に対し発行する証書のことをいいます。
個人を含め広く不特定多数の投資家から株式発行により資金を調達するためには、東京証券取引所などの証券取引所上場します。上場のためには、会社の経営や財務状況をすべて公開し、証券取引所の厳しい審査基準をクリアーしなければなりません。

私たち個人投資家が、証券会社等を通じていつでも自由に売買できるのは、一般的には証券取引所の審査基準をクリアーした上場株式に限定されますが、上場前の株式(未公開株式)についても、特定の証券会社を経由し、一定の手続きと手順を経れば、上場と同時に取得することができます。(“IPO”と言います)

 株式に付随する権利

株式を取得すると、株主となり、その持ち分に応じて株主としての権利を得ます。

① 自益権
  • 配当金を受ける権利(剰余金分配請求権)
  • 解散後の財産を請求する権利(残余財産分配請求権)
② 共益権
  •  議決権の行使(株主総会に参加し、議案に投票する権利)

株式の種類

取引単位による分類

  •  単元株
    議決権を一定の株数以上持っている株主に限定し、その一定数の株式を単元株といいます。取引所での最低売買単位となります。
  • 単位未満株
    単元株数に満たない株式を単位未満株といいます。議決権はなく、取引所での売買もできません。一部の証券会社の店頭では、単位未満株の売買を扱っている場合もあります。

権利内容による分類

  • 普通株
    権利内容に特別な制限のない一般的な株式
  •  優先株と劣後株
    配当金を優先的に受けとれる株式(優先株)と、他の株式に配当した後残った場合だけ配当を受け取れる株式(劣後株)
  • 議決権制限株式
    議決権が全くない、或は一部のみある株式

株式の価格形成と経済的価値

上場株式の株価(市場価格)

株価とは、1株当たりの価格を指します。
上場株式であれば、証券取引所で毎日たくさんの売り手と買い手が出会い、株価(時価)が形成されます。買いたい人が売りたい人より多くいれば、株価は上昇し、その反対に、売りたい人が買いたい人より多くいれば株価は下がります。
すなわち、ある特定の株式に対する需要(買いたい量)と供給(売りたい量)の関係で株価は決まります。

株式時価総額(株価×発行済み株式数)は企業の市場価値を示す

上述のとおり、株価は市場(証券取引所)での需給関係で価格が決定されます。いわゆる市場メカニズムにより、あらゆる情報が集約された結果が株価に反映されているという理屈です。
但し、発行されている株式の数は、企業によってそれぞれ異なります。
従って、企業価値を計る尺度としては、その株価発行済みの株式総数を掛け合わせた株式時価総額が、企業の市場価値(時価総額)を表すことになります。

株式に付与された権利の経済的価値

配当を受け取る権利(剰余金分配請求権)

株主になると、企業が存続し利益を出し続ける限り、配当金を受け取る権利があります。株価には、これらの権利の経済的価値が反映されているはずです。
配当金は、企業が生み出した利益の一定割合(配当性向)から、株主に対しその持ち分に応じて支払われます。

解散後の財産を請求する権利(残余財産分配請求権)

企業が事業を終了し解散を決定した場合、清算手続となります。この際、すべての資産と負債が清算された後に残った財産は、株主が受け取る権利があります。
すなわち、株主は、企業が解散し清算終了後、残った財産をその持ち分に応じて受け取る権利を持っていることが株価形成の出発点となります。
企業が生み出した年間の利益から、税金が支払われます。税引き後の利益は、株主に現金で分配される配当金と企業内で蓄えられる内部留保になります。
内部留保は、資本金に準ずる性質をもち「株主資本」として会計上蓄積され、次の企業の成長のための原資となります。
また、業績悪化で赤字決算の際には取り崩され、損失を補填に使われます。

株式の価格変動要因

日本株式のリスク

資産クラスとしての日本株式の主たるリスクは価格変動リスク信用・倒産リスクです。
個人投資家が主として投資対象とするのは上場株式ですので、信用リスク及び倒産リスクは、基本的には即座に株価に反映されます。
業績が悪化すれば株価は下がり、倒産すれば株価はゼロになります。
また、市場が認識していない隠された未公開情報等にかかわるリスク(粉飾決算等の犯罪行為等があるリスク)は、価格変動のかく乱項として価格変動リスクに包含されます。

(参考)資産形成ナレッジBK/金融商品投資/【金商-1】金融商品の全体像

株価変動要因には大きく2つがあります

① 個々企業株式固有の要因(ミクロ要因)
  • 企業の業績及び業績予想
    特に企業の収益性、成長性や安定性に依存します。
  •  企業の属する業種
    企業の業種の安定度、成熟度、成長性などに依存します。
  • 企業のガバナンス状況、社会的貢献度、認知度やイメージ
    特に最近では社会貢献度(SDGsへの取り組み等)や脱炭素化等温暖化対策への取り組み度合いが重視されています。
  • 発行済み株式数の変化
    例えば、第三者割当増資により発行済み株式数が増えれば、企業価値=株式時価総額が不変とすれば、株価は下落します。
    一方、自社株買いを実行すれば、株式数は減少するので、株価は上昇します
② 株式市場全体の要因(マクロ要因)
  •  国内外経済の状況(好不況、インフレ・デフレなど)
  • 金利や為替相場の状況
  •  株式市場への資金流入あるいは流出の量
  • 財政政策や金融政策
  • 内外政治、地政学
  • 自然災害等

株価の指標

配当利回り

配当利回り=1株当たりの配当金/株価
年間の配当金を株価で割った「配当利回り」があります。株価の値上がり益よりも、毎年の配当金の受け取りを目的とする投資家にとっての目安となります。

株価純資産倍率(PBR)

株価純資産倍率(PBR)=株価/1株当たりの純資産

株価が企業の純資産(簿価)から判断して高いか安いかを判断する指標です。
ある企業について市場が評価した株式時価総額が、会計上の解散価値である純資産(株主資本)の何倍であるかを表す指標です。

前述のとおり、株主の権利として残余財産分配請求権があり、会計理論上、純資産は株主資本であり企業が解散した場合、株主に配分されるべき金額です。
一般論として、(公表されている財務諸表が時価会計として成熟しているという前提において)

  • PBR=1の場合、株価(時価)の水準は、会計理論上の一株当たりの純資産(株主資本)に等しいことを意味しています。
  • PBR>1の場合は株価は純資産価値以上に買われている。すなわち当該企業の将来の成長性が見込まれている。
  • PBR<1の場合は株価は純資産価値以下に売られている。すなわち当該企業の将来の衰退性が見込まれている。

PBR=1の場合の株価は、底値水準(通常これ以上の株価下落はない水準)であるとの見方があったが、近年の日本株式市場では、PBR<0となるケースが多数観察されています。
現在の東京証券取引所上場株式の平均PBRは1.1~1.2倍程度となっています。

株価収益率(PER)

株価収益率(PER)=株価/1株当たりの当期純利益
株価が、企業が1年間で稼げる純利益の何倍まで買われているかを示す指標です。
すなわち、当該株式に投資した者から見ると、現在の収益力で考えると、何年で投資元本が回収できるかの目役となります。

一般的に現時点では低収益ではあるが、将来的には高い収益が見込める企業のPERは高くなります。
また、業種によってPERの水準は異なる傾向にあります。例えば、食品、医薬品、精密機器関係の業種は、平均的にPER高い傾向にあります。
現在の東京証券取引所上場株式の平均PERは13~14倍程度で推移しています。

以  上

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