【第6章】世界の金融市場を動かす米国経済指標 ~物価指標、雇用指標、その他主要経済指標

グローバル金融市場に大きな影響力を持つ米国の金融経済

世界最大の国内総生産(GDP)

GDP世界一の米国の経済はダイナミックに変動し、グローバル金融市場を介し世界経済に多大なる影響を及ぼします。
GDPの成長率や予測など、米国経済の動向を見極めるための各種経済指標は、常に世界の注目を集めます。

世界の金融市場に圧倒的な影響力をもつFRB(米国連邦準備理事会)

アメリカの中央銀行であるFRBは、米国の物価と雇用の安定を目的として、金融政策を担当し、利上げや利下げ、金融緩和や金融引き締めを行います。
特に、政策金利の変更は、世界の金融市場にダイレクトに影響し、また、世界の景況の動向を左右させる力を持っています。

世界の基軸通貨としての米ドルは、為替市場の主役です

米ドルは国際的な通貨として世界中で広く受け入れられています。そして、輸出入等の国際決済では、米ドルの使用が圧倒的なシェアーを保っています。
米ドルは、世界の基軸通貨として機能しています。その要件として、国の政治や経済が安定していることが前提で、常に大きな需要があり、安定性と信頼性が求められます。
米国の経済の動向は米ドルの価値や為替相場に影響を与え、世界中の他の通貨や金融市場にも波及します。

世界最大かつ効率的な株式市場や債券市場の存在

米国は世界最大の株式市場があり、ダウ・ジョーンズやS&P 500などの主要な株価指数が市場の動向を示す重要な役割を果たしています。
また、米国には世界最大規模かつ流動性の高い米国債市場があります。
世界の中央銀行や巨大機関投資家は、安全資産として、たくさんの米国債券を保有しています。
米国の株価や国債の変動は、グローバルな投資家や企業に影響を与え、世界中の株式・債券市場に波及することがあります。

 主要な米国の経済指標

米国の物価動向を知るための主な指標

CPI(消費者物価指数)

CPI米国労働省労働統計局(BLS)が毎月発表するインフレ率を示す指標です。
消費者が購入する一定の財やサービスの価格変動を測定します。
CPIは広く使用されており、一般消費者物価の上昇率を示すため、インフレーションの指標として重要です。
また、「コアCPI」とはCPIから食品とエネルギーの価格変動を除いた指数です。
食品やエネルギーは一時的な要素や季節変動に影響されやすいため、これらを除いた「コアCPI」は、より基礎的なインフレーションの動向を反映する指標として注目されています。

PPI(生産者物価指数)

PPI生産者物価指数であり、生産段階での物価変動を測定します。
生産業者が生産に関与する財やサービスの価格変動を反映しています。
PPIは生産者による価格変動の影響を示すため、インフレーションの先行指標としても利用されます。
PPIは、CPIと同様に米国労働省労働統計局(BLS)が毎月発表します。

PCE物価指数(個人消費支出指数)

PCEデフレーターとも呼ばれ、米国連邦準備制度(FRB)が重視する物価指数であり、個人消費支出の変動を計測します。
CPIとは異なる計算方法を採用しており、FRBの金融政策決定に影響を与える重要な指標です。
PCE物価指数米国商務省の経済分析局(BEA)が発表します。

 

米国の雇用関連の動向を知るための主な指標

米国雇用統計

米国の失業者数就業者数、また、労働時間や平均給与などの雇用に関する状況を調査した統計で、米国労働省労働統計局(BLS)より毎月第1金曜日に発表されます。
調査対象が広く、事業調査と家庭調査に基づいて算出され、特に「非農業部門雇用者数」「失業率」は雇用情勢を把握するうえで重要であるとされています。
この他「平均時給」「週労働時間」を含めた10数項目が発表されます。
これらのデータは連邦準備理事会(FRB)政策決定にも大きく影響を及ぼすとされ、将来の政策への期待感から株式・債券市場や為替市場に大きな影響を与えます。
発表数値が事前予想から大きく乖離することがあり、発表直後は株式・債券相場や為替相場が大きく変動することがよく起こります。

失業率

労働力人口(16歳以上の働く意志を持つ人)のうち失業者の割合となります。
なお、失業後、求職活動を4週間以内に求職活動をしなかった人は失業者に含まれません。

非農業部門雇用者数

農業部門を除く産業分野で、民間企業や政府機関に雇用されている人の数です。
自営業や農業従事者は調査対象に含まれません。

ADP雇用統計

米国で給与計算代行サービスを運営するADP社が毎月発表する民間部門の雇用者数に関する指標です。
ADP社は、全米約50万社、約24百万人のデータを元に、月ごとの雇用者数の増減のデータを発表しています。
市場の注目度が高い労働省による雇用統計のうち、非農業部門雇用者数の民間部門との相関性が高いとされており、雇用統計の先行指標として注目されています。
雇用統計の2日前の水曜日に発表されます。

その他米国の重要経済指標

景気関連指標

IMS製造業景況指数(Institute for Supply Management)

全米供給管理協会(ISM)が全米の企業の購買担当者新規受注や在庫、生産、雇用、入荷状況などの項目をアンケート調査し、これを基に算出する景況指標です。
景況感を0~100で表し 、50ポイントを上回れば景況感が良く、下回れば景況感が悪いと判断することができます。
非製造業部門を対象とした「ISM非製造業景況指数」先行指標として注目を集めています。

PMI購買担当者景況指数(Purchasing Managers’ Index )

金融情報サービスを提供しているグローバル企業であるIHS Markit社が、アメリカや日本、中国、ユーロ圏をはじめとする30以上の国々で調査を実施し、毎月調査結果を公表しています。
IMSと同様に、製造業で原材料や部品などの仕入れを担当している購買担当者へアンケートを実施し、そこから得たデータを数値化したもので、50ポイントを上まわれば景況感が良く下回れば景況感が悪いと判断することができます。

鉱工業生産指数

米連邦準備制度理事会(FRB)が米国の製造業、鉱業、電気ガス等公共事業の生産活動状況について、基準時点(2002年)を100として指数化したものです。
景気全般の動きとかなり密接な関係があり、GDPの推移と強い相関があります。
3ヶ月に1度しか発表されないGDPと異なり月次で発表されるため、速報性に優れていますが、指数の振れ幅が大きく注意が必要です。
同時に発表される設備稼働率は、生産能力に対する実際の生産量の比率です。設備投資やインフレの先行指数になります。

住宅関連指標

住宅着工件数

米商務省センサス局が米国内で一月に建設された新築住宅戸数を調査し、翌月第3週に発表する指標です。
季節調整をかけたうえで年率換算して発表されます。
同時に発表される住宅建設許可件数は、建設にあたって地方自治体への許可申請が必要な地域における許可発行件数を調査したものです。
実際の着工に先駆けて許可申請が実施されるため、住宅着工件数の先行指標として注目される場合があります。
住宅の購入に伴って、家具・家電などの耐久消費財の購入が行われることが多く、個人消費への波及効果が大きいことから注目されています。

中古住宅販売数

全米不動産業者協会(NAR)が、米国国内でひと月に販売された集合住宅を含む中古住宅のうち、所有権移転が完了した販売件数を調査して毎月発表する指標です。
住宅の購入に伴って家具・家電などの耐久消費財が購入されることが多く、個人消費への波及効果が大きいため、景気動向の先行指標として市場関係者から注目されています。
米国の不動産市場では中古住宅販売のほうが新築住宅販売より規模より大きいため、中古住宅販売件数は先行指標としてより注目される傾向にあります。

消費関連指標

小売売上高

米国商務省が、米国国内の小売業の売り上げのサンプル調査をもとに推計したものを、翌月第2週に発表しています。
耐久財・非耐久財が発表されますが、サービスに対する支出は含まれません
自動車販売の比率が高く、また、変動が激しいので、除外した数字が重視されます。

消費者信頼感指数

消費者が現状と将来の経済動向について、楽観的に考えているか悲観的に考えているかをアンケート調査したものを指数化した経済指標です。個人消費の先行指標とされ、消費者心理を反映した指数です。
米国の民間調査会社コンファレンス・ボードが毎月、現在の景気・雇用情勢や6ヵ月後の景気・雇用情勢・家計所得の見通しについて5000世帯を対象にアンケート調査し、1985年を100として指数化したものが代表的な指数として注目されています。
その他、コンファレンス・ボード指数に先行して発表され、同じく米国の消費者マインドを指数化した指標として、ミシガン大学消費者態度指数があります。

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