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【年金-1】公的年金の基本 |
はじめに
国民皆年金:ライフスタイルの変更等で国民年金の手続きが必要です
自営業や無職者も含め、原則として国内に住所がある20歳以上60歳未満のすべての人が、公的年金制度の対象となります。すなわち、個人の意思で加入の有無を決めることはできず、誰もが国民年金被保険者になります。そして、将来の一定の年齢に達した際、年金額を受け取る(受給する)ことが約束されます。
また、病気やケガをして障害となった人には障害年金を、被保険者が亡くなられた際一定の要件に該当した場合その遺族が遺族年金をうけることができます。
公的年金制度は、社会保険制度のひとつとして、公正平等に、また、多様な個々人のライフスタイルに対応できるように、制度設計がなされています。一方で、これまで幾度もの改定を繰り返し、制度自体がかなり複雑になっていることもあり、わかり難い面も多々あることも事実です。
基本事項をおさえ、ライフスタイルの変更の際、必要な手続きを確実に行ない、将来、ご自身の不利益にならないよう努めることが重要となってまいります。
日本国外・国内へ出入国する場合は国民年金の手続が必要となります。
日本国外へ出国(海外に居住)する場合、出国前に必要な手続
POINT国民年金第1号被保険者:国民年金加入資格を喪失しますので、市区町村役場で手続が必要です
国民年金第3号被保険者:国民年金加入資格を喪失しますので、(※)配偶者(国民年金第2号被保険者)の勤務先を通じて手続する必要があります。
(※)厚生年金に加入する配偶者の海外赴任に同行する場合には特例があります。年金事務所に個別照会する必要があります。
国民年金の任意加入が可能です。
日本国籍があれば、国民年金の任意加入制度を利用することができます。任意加入の手続は、市区町村役場の国民年金窓口で行います。任意加入後の保険料は、銀行口座振替、または、国内にいる親族等の協力者が本人に代わって納付書に従い納付する方法があります。
付加年金に加入し、その納付も可能です。
海外の大学等に留学した場合は学生納付特例制度(学生の方で保険料納付を猶予する制度)を利用できません。
日本国内へ入国する場合、入国後に必要な手続
日本へ帰国し、日本国内に住所を有した場合、国民年金の強制加入被保険者となります。強制加入には手続きが必要ですので、転入した市区町村役場で手続きを行ってください。
一時帰国などで短期間だけ住民票を戻した場合でも、その期間は強制加入被保険者となり、その都度手続きが必要です。
任意加入の際に、付加保険料や口座振替による納付を申出していた方が、強制加入後も引き続き付加保険料や口座振替による納付を希望する場合は、再度申出が必要になります。
特例要件(海外特例)に該当している方:国民年金第3号被保険者が日本に帰国し日本国内に住所を有した場合、特例要件(海外特例)非該当の手続きが必要となります。配偶者(第2号被保険者)の勤務先を通じて、手続きを行ってください。
国民年金への加入
国民年金の被保険者の区分
被保険者区分 | 強制加入被保険者 | 対象者例 |
第1号被保険者 | 国内に住所のある20歳以上60歳未満の人で第2号、3号被保険者以外の人。国籍問わない。 | 自営業、農林業者、自由業者、無職者、学生 |
第2号被保険者 | 厚生年金保険の加入者。原則65歳まで加入可。 | 会社員、公務員、私学の教職員 |
第3号被保険者 | 20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者の被扶養配偶者(原則国内居住者) | サラリーマン等の配偶者:専業主婦(夫) |
20歳の誕生日から国民年金に加入し第1号被保険者になります。
以下の人は除きます。
- 既に就職し、会社の厚生年金に加入している人:
自動的に第2号被保険者になります。 - 既に、第3号保険者(専業主婦(夫)等、第2号被保険者の扶養配偶者)に該当する人:
配偶者(被保険者)の勤務先を経由して届出が必要となります
必要手続等
- 20歳の誕生日の概ね2週間以内に日本年金機構から、各種書類が送られてきます。書類に従い、必要な手続をおこなうとともに、保険料の納付をおこなわなければなりません。
- 保険料を納めることが難しい方
・学生納付特例制度:学生の間は保険料納付を先送りできます
・納付猶予制度:経済的に苦しい人のために納付を先送りできる制度です
ライフスタイルの変更による国民年金の種別変更
ライフスタイルの変更例 | 被保険者の国民保険種別の変化 | 届出先 |
高校卒業(18歳)後就職 | 無資格→第2号 厚生年金へ加入 | 勤務先経由年金事務所 |
20歳前に会社員の夫(第2号)と結婚後、20歳を迎えた | 無資格→第3号国民年金へ加入 | 第3号取得:夫(第2号)の勤務先経由年金事務所 |
・大学卒業(22歳)後就職 ・自営業から会社に就職 | 第1号→第2号厚生年金へ加入 | 第2号取得:勤務先経由年金事務所 |
無職だったが、会社員の夫(第2号)と結婚 | 第1号→第3号 | 第3号取得:夫(第2号)の勤務先経由年金事務所 |
会社を退職して実家の自営業の手伝いを始めた | 第2号→第1号厚生年金脱退 | 第2号喪失:元勤務先経由年金事務所 第1号取得:市区町村役場 |
会社を退職して、会社員(第2号)と結婚 | 第2号→第3号 厚生年金脱退 | 第2号喪失:元勤務先経由年金事務所 第3号取得:夫(第2号)の勤務先経由年金事務所 |
会社員の夫(第2号)の扶養配偶者だったが、 ・収入が増え扶養から外れた ・夫が自営業を始めた ・夫と離婚or死別した | 第3号→第1号 | 第3号の喪失:夫(第2号)の勤務先経由年金事務所 第1号取得:市区町村役場 |
会社員の夫(第2号)の扶養配偶者だったが、会社に就職した | 第3号→第2号 厚生年金へ加入 | 第3号の喪失:夫(第2号)の勤務先経由年金事務所 第2号取得:勤務先経由年金事務所 |
出所:日本年金機構HP 制度・手続きをもとに、ライフマネーラボで編集
https://www.nenkin.go.jp/index.html
厚生年金への加入
適用事業所
全国のすべての事業所は、強制適用事業所と任意適用事業所に分かれます。
このうち強制適用事業所はそのまま、厚生年金事業所となりますが、任意適用事業所は、加入するかしないかはその事業所が決めることができます。
厚生年金適用事業所への就職
70歳未満で厚生年金適用事業所へ就職すると、当然のこととして厚生年金へ加入することになります。
なお、パートタイマ―は、勤労形態や就労形態によって、総合的に判断され、厚生年金への加入が可能になる場合があります。
詳細は「【年金-1】公的年金の全体像 3.(3)厚生年金保険の被保険者」 を参照下さい
加入の手続きは、就職先の会社(事業所)を経由し、日本年金機構へ届出することになっています。
厚生年金へ加入すると、自動的に国民年金の第2号被保険者の資格を得ます。
また、その者の扶養配偶者は、国民年金の第3号被保険者となります。
厚生年金保険の種別と実施機関
2015年10月、共済年金との一元化により公務員も厚生年金保険に被保険者になったため、被保険者は4つの種別に区分されています。
被保険者の種別 | 被保険者の名称 | 実施機関 | |
会社員 | 第1号厚生年金保険被保険者 | 一般厚年被保険者 | 国(日本年金機構) |
国家公務員 | 第2号厚生年金保険被保険者 | 国共済厚年被保険者 | 国家公務員共済組合 |
地方公務員 | 第3号厚生年金保険被保険者 | 地共済厚年被保険者 | 地方公務員共済組合 |
私学教職員 | 第4号厚生年金保険被保険者 | 私学共済厚年被保険者 | 日本私立学校振興・共済事業団 |
年金の裁定請求(年金受給が始まる時)
受給権の確認と給付請求
年金は受給権が発生したら自動的に受給できるものではなく、受給権者が自ら国(厚生労働大臣)に対し請求しなければなりません。
これを裁定請求といいます。
65歳時に受給資格を満たした人には、65歳になる3ヶ月前に日本年金機構から、年金請求書(国民年金、厚生年金老齢給付)が送付されてきますので、この用紙で裁定請求を行います。
年金の裁定請求先
加入状況によって以下のようになります。
国民年金第1号のみの人 | 所在地の市区町村役場 |
国民年金第3号が短期的にでもある人 | 年金事務所 |
(第1号・第3号)+最終が厚生年金保険(第2号) | 年金事務所 |
厚生年金保険(第2号)+最終が第1号・第3号 | 年金事務所 |
共済年金加入期間がある人 | 各共済組合または 年金事務所 |
厚生年金基金加入期間のある人 | 厚生年金基金または 企業年金連合会 |
裁定請求の事前準備
- 以下を持参し、最寄りの年金事務所で事前にチェックをしてみましょう。
・年金手帳
・基礎年金番号通知書
・年金定期便などの資料
・印鑑
・委任状(本人以外が出向く場合) - チェック項目
・自分の職歴の記録(被保険者期間記録照会)をとり誤りはないか
・年金受給見込み額、繰り上げ、繰り下げの場合の見込み金額
・複数の年金番号がある場合、統合してもらう
・旧姓のままの人は氏名変更をしておく
裁定請求の一般的な添付書類
- 本人および配偶者の年金手帳(被保険者証)基礎年金番号通知書
- 受給権発生日以降の戸籍謄本(抄本でもよい場合あり)
- 家族全員の記載のある住民票
- 印鑑(認印で可)
- マイナンバーのわかる書類および本人確認書類
- その他、必要に応じて、雇用保険被保険者証、年金証書、配偶者課税(非課税)証明書、子の在学証明書 など
出所:日本年金機構HP 制度・手続き
https://www.nenkin.go.jp/index.html
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