オルタナティブ投資とは
オルタナティブ投資の定義
従来の伝統的な投資手法は、上場株式や債券などの市場性(いつでも自由に市場価格で売買できる)のある有価証券等に投資して、値上がり益(キャピタルゲイン)や金利・配当による利益(インカムゲイン)を追求するスタイルです。
すなわち、お金を支払い、株や債券を買い、一定期間保有すること(ロングポジション)により、その果実を得る手法です。
そもそも、オルタナティブ(Alternative)とは、「代替」あるいは「代わりの」といった意味です。
すなわち、オルタナティブ投資とは、伝統的投資手法とは異なる代替的な投資手法のことを指します。
オルタナティブ投資の一般的な特徴
- 伝統的な投資(上場株式現物への投資や債券現物への投資)との相関が比較的低く、投資家のポートフォーリオの分散効果を高めるために利用されることが多い。(ポートフォーリオのリスク低減に役立つ)
- 伝統的な投資よりも、期待収益が高い
- 一方、流動性が低く、また、取引自体に制約がある場合があり、持ち分の換金や売却が制限されることがある(投資前にしっかりと理解し、条件把握しておくことが必要)
- 運用手法は複雑で難解なものが多い
- 多くが複雑な投資構造を持つため、リスクの所在や大きさなどの把握には、高度な技術や知識が必要
- 投資への必要最低投資額は、一般的に高額の設定となっている(機関投資家向け)
オルタナティブ投資商品の分類
オルタナティブ投資は、その投資対象や投資手法が次々と生まれてくる新しい投資商品です。
したがって、定まった分類方法はありませんが、概ね、プライベートエクイティ、ヘッジファンド、その他の3つに整理できます。
ヘッジファンド
- 一般の投資信託(ファンド)と違い、機関投資家や富裕層などの特定の投資家から資金を集める(私募)ファンドです。
- 伝統的投資商品である株式や債券の現物取引に、先物取引や店頭取引(スワップ取引等)の金融派生商品(デリバティブ)を活用して、高い収益を狙うものや、ロング・ショート運用のように売りと買いを両建てにして「絶対収益」を狙うものなど、さまざまな運用手法のファンドがあります。
- 一般的に、最低投資金額が高額で、また、広く一般的に募集されるものではないため、誰でも購入できるファンドではありません。
個人投資家にとっては、様々なヘッジファンドで構成される投資信託(ファンズオブファンズ)への投資が一般的となります。
運用手法や、投資対象、リスクの種類によって、様々なファンドがありますが、大きく2種類に分類できます。
市場方向型
市場相場の方向性(上昇、下落)について判断しながら、ポジショニング(ロングポジションやショートポジション)する運用手法
- ロング/ショート戦略
伝統的投資商品である株式や債券の現物取引に、先物取引や店頭取引(スワップ取引等)等の金融派生商品(デリバティブ)を活用して、ポジショニング(ロングポジションやショートポジション) - マクロ戦略
経済ファンダメンタルに着目、割安・割高を判断
市場中立型
ある市場全体の動きのリスクは取らずに、市場間や銘柄間等の間で発生する歪みを利用して収益を狙う運用手法
- マーケットニュートラル戦略
ロングとショートのポジションを組み合わせ、マーケット全体の価格変動リスクを廃除し、銘柄の個別リスク要因だけからリターンを狙う - アービトラージ戦略
異なる市場間や、商品間で発生する歪みを見つけ出し、その歪みが解消されることによりリターンを得るようなポジションを作成する戦略
プライベートエクイティ(PE)
プライベートエクイティ(Private Equity:以下“PE”と言います)とは、一般的には上場株式以外の未公開株式を意味しています。
投資家から集めた資金を、PEを投資対象として、運営するファンドをPEファンドと言います。
PEファンドは、投資先企業(未公開企業)の成長ステージと保有する投資先企業の議決権シェアの水準に応じて、いくつかの類型に分類されます。
バイアウト(狭義のPE)
50%超(通常100%の場合が多い)の議決権シェアを獲得し、投資先の経営権を握り、その後の企業価値の向上を早期に実現することを目的としたファンドです。
“狭義のPE”あるいは単に“PE”と呼ばれることも多いです。
ベンチャーキャピタル(VC)、グロースキャピタル
通常、VCファンド、グロース系ファンドと呼ばれ、主に、スタートアップ企業やベンチャー企業等に対する投資、さらに、成長企業向け投資を行うファンドです。
マイノリティ(50%未満の議決権シェアが中心)投資のファンドです。
これらもPEへの投資であり、PEファンドといえますので、“広義のPE”として整理されます。
その他
その他投資対象として、以下の商品がオルタナティブ投資の投資対象として分類されます。
いずれも、伝統的投資商品と比べ価格変動リスク、流動性リスク、或いは、その他固有のリスクが高い商品です。
不動産
土地・建物など不動産関連の投資商品。不動産投資信託(REIT)や国内外のREITに投資する投資信託、私募ファンドといった金融商品の他、現物不動産を保有・運用することもオルタナティブ投資に含まれる。
コモディティ
金・銀などの貴金属、原油や天然ガスなどのエネルギー、小麦や大豆などの農産物など、商品先物取引所で売買されている商品へ投資する。
インフラファンド
鉄道や空港、発電所などの社会インフラに投資するファンド。
証券化商品
ローンやリースといった将来的に収益が期待できる資産についてキャッシュフローを裏付けにした有価証券を発行したもの。代表的なものはMBS(不動産担保証券)、CBO(社債担保証券)など。
ウイスキー樽(カスク)投資
主として個人投資家向け:ウイスキーを樽単位で購入し、熟成(5年~10年)を待って売却し、そのキャピタルゲインを目的とします。
また、熟成後、ボトリングを行い、オリジナルブランドのラベルを張り、輸入販売することも可能です。
アンティークコイン投資
主として個人投資家向け:古い時代に発行された希少性のある貴重なコインを購入して、購入価格よりも高く売却する投資手法です。
主に知的富裕層から好まれており、発行枚数や残存枚数の少ないコインほど高い価格で取引されています。
最近の潮流
これまで、上述のような、PEやヘッジファンドなどのオルタナティブ資産を扱ったファンドは一般に最低投資金額が高く設定され、流動性も低く、1口数十億円規模の投資が可能な保険会社などの機関投資家向けの商品とされてきましたが、最近では小口化などで販売先の間口が広がり、個人投資家でも容易に投資ができる環境が整いつつあります。
具体的には、以下の例が報道されています。(2023年の日経記事より)
- 大和証券、ベンチャーキャピタル(VC)を通じて日米のスタートアップに投資する公募型の投信を富裕層向けに販売を始めた。
- SMBC日興証券は、未上場株を含む公募投信を個人の富裕層が投資しやすい最低金額で設定する
- 三菱UFJモルガン・スタンレー証券はプロ向け商品を小口化して個人に販売を始めた。
- みずほ証券は米債券運用大手ピムコと組み「プライベートクレジット(非公開融資)」のファンドを販売開始
- 米資産運用最大手ブラックロックのインフラファンドなどで残高を増やし、富裕層と法人への販売額は10月末までに計1000億円に達した。
- 米大手投資会社ブラックストーンは野村ホールディングスと組み、日本の個人に公募型の非上場REIT(不動産投資信託)をこれまでに約500億円販売した。
- SBIホールディングは、米投資ファンドのKKRと共同で日本に資産運用会社を設立することで基本合意したと12日に発表した。日本の個人投資家に対し、KKRが運用するオルタナティブ(代替)資産の投資商品を販売する。
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